むし歯や歯周病などは、患者さん自身が何となく想像ができます。しかし、口腔外科の疾患は、とても不安になることが多いと思います。なぜなら、その症状が出ているのかわからないからです。例えば、舌がしびれることや口内炎を繰り返していることなど、原因がわからないことはとても不安になると思います。私自身、口腔外科の病院で長く勤めてきたことで、たくさんの口腔外科関連の疾患で悩んでいる人を見てきました。みなさんに共通しているのが、「悪いものだったらどうしよう」です。私は、患者さんに原因と予後、対策をしっかり伝えることで、患者さんに安心して帰ってもらうことをモットーにしています。あなたのその不安をぜひ、ご相談ください。

歯周病とは、歯茎の病気と思っている方が多いですが、骨の病気です。歯と歯ぐきのすき間（歯周ポケット）から細菌が侵入し、歯肉に炎症を引き起こしたり、最終的には歯を支える骨（歯槽骨）が溶ける病気です。30歳以上の日本人の80％が罹患していると言われており、歯を失う原因として、むし歯よりも多くの割合を占めています。炎症が歯肉だけに留まっている状態を「歯肉炎」、炎症が歯槽骨や歯根膜にまで広がっている状態を「歯周炎(歯槽膿漏)」といいます。むし歯と異なり痛みがなく、気づかないうちに進行する特徴があり、歯周ポケットが深くなっていくと、歯肉が腫れたり、歯がグラグラしたりして、ものが噛めなくなり、歯が自然に抜け落ちるほど重症になることもあります。気が付いたら、抜歯しないといけない状態になっていたり、一か所だったものが口全体に広がってしまっていることもあります。

小児歯科はお子さんのむし歯の治療や予防により、健全な永久歯への生え変わりをサポートする診療科です。生後約6カ月頃から乳歯が生えはじめ、約20本の乳歯が2歳半には生え揃い乳歯列が完成します。その後、永久歯が6歳頃から生え始め、徐々に大人の歯に生え変わり、13～15歳頃に永久歯が生え揃います。お子さんの体の成長と、歯の成長を見ながら、永久歯がしっかり安全に生えてこられるよう、将来を見据えて治療計画を立て診療を行うのが小児歯科の特徴です。むし歯・歯肉炎の予防と治療、歯並びやかみ合わせの確認などを、お子さん個人の成長に合わせて行う必要があります。また、お子さんの生活習慣や食生活、癖などの改善指導も必要に応じて行います。

歯科医療の目的は口腔疾患の予防と治療により、口腔機能を健康的に保持していくことにあります。しかしながら、治療によって機能と形態回復を優先することで、審美的な要素の優先順位は低い傾向にあります。保険適用で使用できる銀色の詰め物や被せ物が主流でしたが、金属色が目立ち見た目が気になることや、金属が溶け出しアレルギーの原因になることもあるため、近年では天然歯のような見た目と固さを持ち、金属を使用していないセラミックの補綴物を希望される患者さんも増えています。当院では、機能と審美的な満足感が両方得られることで、心身ともに健康を取り戻すことができると考えます。

何らかの理由で、歯を失ってしまった場合、歯を入れる方法は義歯、ブリッジ、インプラントの3つしかありません。その方法の一つがインプラント治療です。顎の骨の中に生体親和性の高いチタン製の人工歯根を顎（あご）の骨に埋め込み、人工歯根の上に土台を立て、人工の歯を被せる方法です。天然歯のような見た目と自然な咬み心地を取り戻すことができます。部分入れ歯やブリッジとは異なり、歯がないところの両隣の歯を削ることがないので、両隣の歯の負担が少なくなります。インプラントは、他の治療法に比べて自分の歯のように咬むことができます。人間の噛む力は、体重に比例すると言われており、50～60キロもの力が歯にかかるといわれています。

歯を失った場合、歯を入れる治療法を補綴（ほてつ）治療と言います。補綴（ほてつ）治療の方法の一つに、「入れ歯」があります。
入れ歯は、全部の歯を失ってしまった場合の総入れ歯や歯を部分的に失い、その部分を補うための部分入れ歯があります。また、材質や構造、バネの種類など多様で、患者さん一人ひとりのご希望やライフスタイルに合わせて製作することができます。

矯正歯科は、歯の位置やかみ合わせを整える治療が主体となる診療科です。
「歯並びが悪くても、気にならなければ治療の必要はない」と考えている人が多いと思います。しかし、矯正治療は見た目の改善が大きな要素を占めますが、正常な咬み合わせにすることで、多くのメリットをもたらします。正常な咬み合わせによって、「むし歯や歯周病になりにくい」、「適切な咬む力が得られる」、「正しい発音で話せる」、「歯の破折や顎の痛みを予防できる」などがあります。また、歯並びが整うことで、しっかり咬め、食べ物の消化吸収率が上がることにより、全身の健康につながります。
ご自身やお子さんで、歯並び・噛み合わせに関してお悩みがある方は、ぜひ一度、気軽にご相談ください。

口の機能が弱くなる原因は、年齢のせいだけではありません。病気やケガ、生活習慣、障害など、さまざまな理由で起こる可能性があります。

お口の機能（食べる・飲み込む・話す・唾液が出るなど）が低下している状態を「口腔機能低下症（こうくうきのうていかしょう）」といい、れっきとした「病気」です。